「Scaling Teams 開発チーム組織と人の成長戦略」を読んで
Scaling Teams 開発チーム 組織と人の成長戦略 (Compass Booksシリーズ)
- 作者:David Loftesness,Alexander Grosse
- 発売日: 2020/05/29
- メディア: Kindle版
本を手にとった理由
自分は10人程度の組織を4つ束ねた課のマネージャーでプロダクトが期待されるスコープは急拡大している。自然と組織のサイズが大きくなっているのでプロダクトスコープの拡大に組織の体制が追従していく必要がある。すでに感覚的には限界やリスクを感じている部分があるので拡大していく組織の生産性を維持もしかくは向上させるアイデアが欲しかった。まえがきを読んでみるとハイパーグロース中の組織のマネージメントを念頭においているような節があったが既にある程度成熟している大企業でも適応可能なアイデアや原則を吸収したいと思う。 特に組織デザインのスタイルとしてプロダクトラインでバーティカルに組織化するか職能ラインでホリゾンタルに組織化するのかハイブリットか。。。もし答えはなくとも原理原則に触れられれば嬉しい。
いつもは前から順に読んでいくスタイルだが、今回は興味のある章から順に読んでいくスタイルを試す。 採用と文化についてはななめ読みした。
まとめ
バリューストリームとデリバリー組織を基本とした組織構成について何度もしつこく解説してくれたおかげで今向き合っている組織を最適化していく指針が得られた。 組織のありかたに唯一の正解はないどの体制を取ってもプロコンが出るので候補を比較し採用した方式の弱点を理解し、補うアプローチを取りたいと思う。
ポイント
6章:組織設計の原則
この章は「規模の不経済の回避」をテーマにしている。 エンジニアリング組織論の「技術組織の力学とアーキテクチャ」で述べられていた部分と重なる部分が多かった
特に増員とアウトプットの関係性、自律性と身勝手の違やバランスのとり方については特に詳しくのべられていたのでこの章を読んだあと読み直した。 両方の本から得たことを合わせて書いていこうと思う増員とアウトプットの量
アウトプットとは組織の情報処理能力であり、情報処理能力は組織の人員が増えるとある点からは急激に低下すると説明している。 情報処理能力が低下するのは情報の非対称性が原因
バリューストリームをの断絶リスク
バリューストリームをの断絶を招くような組織デザインではなく複数の職種からなる「着想〜公開」を95%以上独力で行うことができる組織デザインを勧めている。 そのよなチームのことと「デリバーリーチーム」と重んじるべき価値として内発的動機づけの基軸である自律性・熟達・目的を背景に5つの原則を提示している。 バリューストリームを断絶する組織デザインが原則を遵守することの困難さは * 「着想〜公開」をチーム内で完遂できない * バリューストリームの下流では顧客との接点が薄れ目的意識が希薄化 * 組織間の合意形成にかかる時間が継続的デリバーリーを間延びさせフィードバックの機会を奪う 「着想〜公開」までを内部で完結するチームで困難を回避し原則をフォローするように務める
自律性の限度(権限と責任)
自律性の範囲は?何でも組織の意思で決定できるのか? 適切な自律の範囲を維持させるのは非常に難しい。権限は株主から一般社員へ経営陣、管理職を経て段階的に委譲される。 権限とは会社の資産・リソースを自由に使うことができる権利である。責任は権限を行使したことでもたらした結果を説明する責務だ。
委譲と成功度の測定
上司は信頼して権限を委ねた上で結果の説明を求める必要がある。 そのとき結果は明らかに測定可能であり会社の目的に沿ったものでなくてはならない。 おそらくいつでも数値で表せるほど現実は単純ではないだろうから数値目標の改善を長期目標に据えてた重要行動計画(Key Action)を定義してアクションがResultに及ぼす影響を計測できる仕組みを追い求めるべきだと思う。
7,8章:組織のスケーリング:デリバリーチームと報告体制
7,8章では具体的な例をあげながら原則の適応方法について議論している。 組織編成、レポートラインにおいてもバリューストリームとデリバリー組織の原則を維持する考え方基本にしている。 どの会社、組織にでも適応できる組織構成など存在しない、現状のチームの能力やプロダクトが置かれている状況を理解してその時々に最適なあり方に修正するだけ。原則は最適化の指針になる。